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タバコ問題に関するコラム集

No.9(2006年1月18日)
国家財政と健康救う「タバコ増税」の実現を
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2006年1月号 掲載)

喫煙の害が社会的に認知をされると同時に、政府のタバコ政策も、大きく変わってきました。広告の全面禁止、タバコの警告文強化などはこれからさらに進むと思いますが、私たちの最大の関心事は次世代の喫煙防止です。それには、学校、家庭、地城でタバコについての正しい知識を伝えるとともに、タバコを入手しにくくすることも緊急の課題です。

日本のタバコの価格は、際立って安価です。子供の小遣いから容易に買え、自動販売機で誰に咎められることもなく入手できます。これは未成年者の健康に注意を払わない、世界でもまれな政策です。日本の国家財政に古める医療費の割合が上昇していますが、その原因となっている種々のタバコ病を予防するために、タバコ消費を滅少させようというのが「タバコ規制枠組条約」の主目的です。タバコ価格の引き上げが消費量を減少させるだけでなく、タバコ税収を増加させることは、世界銀行やWHO(世界保健機間)の調査でも明らかになっています。

タバコ税を1本10円程度引き上げ、最低でも200円以上の値上げを実施すれば、子供の喫煙防止に大きな効果が出ると思われます。米国の一部の州やヨーロッパ各国のタバコ価格は1箱600円以上の高さです。子供をタバコの害から守り、同時に「やめたい」と思いながら吸っている多くのニコチン依存症患者のタバコ離れを促すために、タバコ価格の大幅な引き上げは最重要謀題です。

ところが、JTとタバコ販売関係者は、タバコの値上げが実行された場合、将来ともに大切な「お客さま」である未成年者の喫煙が滅少することを熟知しています。多くの調査で、20歳を過ぎてから新たに喫煙を開始する人は非常に少ないことが明らかとなっているのです。政府、国会、政覚は「タバコ増税」を真剣に議論すべきです。成人の70%以上が非喫煙者であり、「国家財政と健康を救うタバコ増税」は、多くの国が選択している政策でもあります。

主な国々のタバコ価格(2005年1月)

ノルウェー(マールボロ)1200(950)円
スウェーデン(マールボロ)1000(850)円
イギリス(ベンソン&ヘッジス)982(758)円
カナダ(プレイヤーズ)753(537)円
米ニューヨーク(マールボロ)736(428)円
フランス(ゴロワーズ)621(500)円
ドイツ(ハーベー)527(397)円
日本(マイルドセブン)270(171)円

()内はタバコ税+消費税


No.8(2005年10月12日)
がんが減らない「対がん十ヵ年戦略」
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2004年2月号 掲載)

現在、日本の死亡原因のトップは「がん」です。ところで、この問題に”政策的な”取り組みを開始して、早くも20年が経過しようとしています。
まず最初は1984年、中曽根内閣が政府として初めて「対がん十力年戦略」を打ち出しました。
次いで94年から「がん克服新十力年戦略」となり、現在「第三次対がん十力年総合戦略」が検討されています。

「読売新聞」では、2003年12月3日から5日まで「がんに挑む」というタイトルで、1面で大きくこの問題を取り上げました。
第1回目では、専門医や放射線技師の不足、研究所の職員の数、米国立がん研究所の年間予算約5000億円に対し、日本の来年度予算が260億円と桁違いの額を指摘。
また、小泉首相が2002年の施政方針演説で「がん治癒率の大幅な改善を目指す」と述べ、がん対策の重要性を述べたことを指摘しましたが、今回の政権公約では、何も触れていないことを紹介しています。
第2回目は、「治療の質に地域格差」でした。放射線治療を例に挙げると、認定医は全国に423人おりますが、大都市に集まっており、ゼロの県やたった一人という県もずいぶんあるようです。
3回目は、「新治療実現へ正念場」で、新薬の開発、基礎研究の実用化、新しい治療法の基盤整備などがうたわれています。

ところで、「がん対策」で「治療」はもちろん重要なことです。しかし、最も大切なことは、「新たながん患者をつくらない」ことではないでしょうか。
そのため、WHO(世界保健機関)は、70年代から「喫煙規制対策」を勧告してきました。
これを受けて、欧米先進国をはじめ、台湾やタイ、韓国など、タバコ広告や自販機の禁止、禁煙教育の徹底、病院・学校・職場・交通機関などの禁煙推進、そして禁煙希望者への支援対策などに幅広く取り組んできた国では、肺がんなどタバコ関連疾患は着実に減少傾向を示しています。
わが国の「対がん戦略」は、84年のスタート当初から、意図的に「タバコ規制」→「禁煙推進」を避けて通っているのではないかと思います。
04年度からの取り組み目標の柱も、@がんの本態解明、A基礎研究の臨床への応用、B革新的な予防、診断、治療法の開発、Cがん発症率の低減、D全国どこでも質の高い医療を受けられるための地方拠点の整備、などとなっており、「禁煙」はまったく入っておりません。
これでは「がん」が減るわけがありません。

がん対策の根本は「タバコ規制」「禁煙推進」でなければならないという当たり前のことが、なぜ中心テーマとならないのでしょうか。
その答えは明白で、政府がJTの株を6割以上も保有し、財務省がタバコ事業の監督官庁、さらに国会に多数の「タバコ族議員」が存在しているからです。
これでは、「がん征圧」は掛け声だけで、世界の常識に逆らっているのが日本政府の姿勢と言わざるをえません。
(注)文中「今回の政権公約」は2003年11月の衆議院選挙です。また、現在政府が保有するJTの株は50.04%です。


No.7(2005年10月2日)
日本の消費者運動も、真剣に「有害商品・タバコ」と闘って欲しい
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2005年10月号 掲載)

日本ではまだ「タバコは個人の趣味・嗜好という考え方が根強く残っており、「公衆衛生上の重要な問題」という視点がきわめて薄いのが現状ですが、それでもここ数年、禁煙・分煙対策は学校、病院、自治体など相当進んできました。
しかしその一方で、JTのイメージCM、自動販売機、F1レースなど各種イベントの規制は、諸外国と比べると大幅に遅れており、その最大の原因は、政府がJTの大株主であることと財務省の関与、そして「たばこ事業法」の存在です。
数年前「ハンセン氏病が大きく取り上げられ、長年苦しんでこられた患者さんの訴えに、強く胸を打たれました。
熊本地裁は政府と国会の責任を厳しく指摘し、その後「らい予防法」が廃案となりましたが、「たばこ事業法」も時代にそぐわない法律の筆頭です。
また、他の先進国と比べてタバコの価格が安過ぎるので、値上げが重要な課題ですが、タバコ税と消費量の削減を恐れる政府・財務省は、1本1円などという「禁煙意欲」をほとんど促進しない小幅な増税でお茶を濁しているのが現状です。

私が残念に思っていることの一つに「タバコの消費者」がこの問題についてなぜ「安全性」を無視しているかという疑問があります。
米ケネディー大統領は、「消貴者の4つの権利」を主張しました。
@安全の権利、A知る権利、B選択の権利、C意見を言う権利です。
食品、飲料、衣料、家電製品田など多くの「商品」に対し、その「消費者」が、安全性や流通や価格などを熟心に追及しますが、「タバコ」は「消費者」がほとんど問題追及しない商品であり、日本の多くのスモーカーは、極端なことを言えぱ「タバコに感謝しながら死んでいく」のが現実の姿です。
たとえば、人気俳優などの葬儀の際「生前好きだったから」と棺桶の中にタバコを入れることなどが、美談として報道される有様です。

消費者運動の中心メンバーも日ごろ「生き方を変えよう」「生命・健康を守ろう」などと主張していますが、そう言いながらタバコをスパスパ吸っている姿を見ると、その矛盾した言動に疑問を感じることがしばしばです。
以前来日したアメリカのラルフ・ネーダー氏ば、タバコ産業を「現代の死の商人」と指摘し、その企業責任を厳しく追及しました。
日本の消費者運動も、もっと真剣に「有害商品・タバコ」と闘って欲しいと思いますが、リーダーが喫煙者では、その願いは届くはずがありません。
多くの市民に対し「生き方を変えよう」「健康を守ろう」と呼びかけるなら、まずリーダー自身が悪習慣と手を切ったうえで−−と思うのですが、無理な願いなのでしょうか。


No.6(2005年9月21日)
運転中の喫煙者にも「罰則」を
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2005年3月号 掲載)

2004年11月から施行された「改正道路交通法によって、運転中の携帯電話使用による摘発者(反則金5000円〜7000円)が、全国で2万人以上となったことが警察庁のまとめで判明しました。
実は、この「法律」の施行を検討している段階で、警察庁から意見を求める呼びかけ(パブリック・コメントの募集)があり、私は「運転中の危険度は携帯電話ももちろんだが、喫煙も危険な行為なのでこれも加えるべきである」として次のような申し入れを行っていました。
@タバコをケースから出し、タバコに火をつけるのは非常に危険な行為。Aタバコの煙が視野を狭くしたり、血管を収縮させて注意力が散漫になる。B灰皿に灰を落とす際に、前方から目をそらす。C片手運転による事故発生のリスク。D中枢神経に対するニコチンの作用で脳の働きが鈍くなる。E窓を開けて灰を飛ばしたり、吸殻を捨てたりすることにより、歩行者の火傷や火災発生の危険が高まる。F同乗者への受動喫煙強要のリスク。

自動車の運転には細心の注意が必要であるとして、自動車教習所でも、運転免許試験場でも、免許取得に際していろいろなことを教えていますが、残念ながら「タバコ」については、まったくと言ってよいほど何も触れていないのが現実です。
携帯電話でもう一つの問題は「ハンズ・フリー」が認められていることです。
最近、耳にかけて話ができる器具がずいぶん売れているようですが、両手でハンドルを握っているから安全とでも言うのでしょうか。
私は、たとえぱ金銭的な話とか、男女関係のもつれとか込み入った話になれば、相当神経が過敏となり、注意力もそがれてしまって、運転するうえで危険な状態が生まれてしまうのでばないかと危慎します。
それに輸をかけて、タバコを吸いながら……となると、危険度は何倍にも高まってしまうのではないでしょうか。

だいぶ前、警察庁のスローガンに「注意一秒、怪我一生」というのがありました。
ばんの一瞬横見をしたり、ほかのことに気をとられ、それが大事故につながることを指摘した説得力のある標語だと覚えていますが、携帯電話もタバコもこれに抵触する行為と思います。
今後、推帯電話については「法律」によってこれに違反するケースは大幅に改善されていくはずですが、「運転中の喫煙」についてこれを放置しているのは問題と考えます。
警察庁は、早急に「運転中のタバコ」についても罰則を設け、安全運転を守るよう道路交通法に加えるべきではないでしようか。


No.5(2005年9月12日)
「ファッショ」「魔女狩り」論への反論
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2005年1月号 掲載)

公共の場所、交通機関、職場などの規制対策が広がっているなかで、禁煙運動への「誹謗・中傷」もまたエスカレートしています。
たとえば「不気味な正義感−個人的嗜好への干渉やめて」(作家・故生島治郎氏)、「嫌煙権は隣人に向かって「タバコを吸うな」と強制するものだ」(作家・故宮島健夫氏)などがあり、最近では「タバコはなにも規制するような問題じゃない」(大学教授・養老孟司氏)、「このごろの禁煙世論は、陰謀の臭いがする」(評論家・猪瀬直樹氏)、「嫌煙権運動は魔女狩り的」(毎日新間・岩見隆夫氏)などというコメントが、盛んに掲載されています。
しかし、タバコを規制しているのは、「禁煙・嫌煙運動」ではなく、交通機関や自治体、民間企業なのです。
もちろん私たちは、これらの企業や交通機関に対し、「喫煙の場所的制限」を求めて働きかけを行ってはきました。
それを、タバコ撲滅運動や喫煙者追放運動などと受け止められている識者の視野の狭さには唖然とするばかりです。

また、これらの「文化人」の方々は、「何でもアメリカの真似をしてタバコを追放しようとしている」などとも主張しています。
確かにアメリカで、1964年に『喫煙と健康問題公衆衛生総監報告書』が発表されてから、連邦政府が先頭に立って、がん協会、医師会、肺協会、心臓協会など医学団体もこれを全面的にバックアップ、広告規制や警告表示、喫煙の場所的制限が図られたことば事実ですが、「生産・販売を法律で全面禁止する」という方針は現在もとっていないことは周知の事実です。
1970年以降、WHO(世界保健機関)でも、タバコの危険性に対して、加盟各国にたびたび勧告を行い、幅広い規制対策の実施を求めてきました。

私たちの運動も、この世界的な流れに沿って展開してきたものであり、個人の自由や人権を踏みにじる独裁者の「ファシズム」や「魔女狩り」と同一視されるのは、まったくの筋違いとしか言えません。
「禁煙・嫌煙運動」は、非喫煙者がタバコの煙に汚染されない権利を守ろうとする目的と同時に、「やめたい」と思いながら吸っている多くの喫煙者を何とか助けたいと考えて行動しているのです。
大橋巨泉氏は、「週刊現代」の連載コラムで、「日本の有数な知識人である養老孟司氏や、岩見隆夫氏が煙草擁護論を打つと、禁煙団体が騒ぐが、ボクに言わせると、ニコチンは優秀な頭脳も麻痺させる程毒性が強いのだろう。煙草の話になると、別人になってしまうのだから」(2004年2月4日号)と、問題の本質を鋭く指摘しています。


No.4(2005年9月8日)
「アスベスト問題」、「タバコ」は意図的に”無視”?
がんを治す完全ガイドイースト・プレス)2005年9月号 掲載)

「アスベスト問題」が連日のようにメディアを賑わせています。
肺がんの大きな原因であり、潜伏期間が30〜40年という長期間、この「公害物質」を扱ってきた企業の社会的責任が問われています。
新聞報道によれぱ、1976年にはアスベストの危険性が判明しており、厚生労働省でも、この問題に対して謝罪の姿勢を示しています。
では、タバコについて、日本政府はどのような態度で臨んでいたのでしようか。
実は、喫煙と健康の問題については、1964年に米国公衆衛生長官報告書『喫煙と健康』が刊行されてから、欧米先進国において本格的な取り組みが開始されました。
日本でも、当時の厚生省がさっそくこの報告書を取り寄せて翻訳し、喫煙の害について認識していたのです。

『朝日新聞』客員論説委員の小林慶一郎氏によれぱ、アスベスト被害の問題は企業や省庁などの組織の限界を露にした面があると言います。
発症までの期間が30年もある問題を企業がきちんと考えて行動することは、組織の成り立ちからそもそも無埋があると同氏は述べていますが、これは「タバコ産業」には当てはまらないと思います。
タバコの煙にはこれまでも指摘してきたように、4000種類もの化学物質が含まれ、そのうち200種の発がん物質、発がん促進物質が含まれていることが確認されています。
この煙が、喫煙者はもちろんのこと、周囲の非喫煙者にも多大の健康被害を与え続けているという事実は30年以上も前にWHO(世界保健機関)はじめ多くの国々で確認されています。

小林氏はアスベストについて、「こうした問題を未然に防ぐには、予防原則を徹底するしかないが、現在の会社組織のあり方や社会通念では、不確かな危険に先制的に対処することは難しい」、「一つの方向性はこの種の健康被害に限って、企業や行攻の責任というだけでなく、関係していた個人の責任も訴求していくという考え方である」と述べていますが、まさにこれは私たちが取り組んでいる「タバコ病訴訟」や「禁煙タクシー訴訟」にもぴたりと当てはまる発言ではないでしょうか。

特に今回の多くのメディアの追及ぶりを見ていますと、アスベストという「有害物質・危険物質」を連日大きく報道していながら、むしろそれ以上の危険性を有しているタバコについての「無視」「無関心」の姿勢に疑問を感じています。
この落差はどこから来るのでしょうか。日本専売公社時代からの国の関与、そして「民営化」後も大蔵省→財務省の主導のなかで、厚生省→厚生労働省の弱腰や、日本たばこ産業(株)の歴代社長、タバコの有害性、依存性などについて後ろ向きの発言を行ってきた御用学者、文化人の罪は計りしれないものがあります。
さらにつけ加えれぱ、ジャーナリストの姿勢にも苦言を呈さなければなりません。タバコ公害の解決にも、もっと本腰をいれていただきたいと願ってやみません。


(過去のコラムに関しては、ページの都合で削除しています。)



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